概 要
他臓器との関係
空腸壁の構造
 ( 粘膜 [粘膜上皮粘膜固有層粘膜筋板]、粘膜下組織筋膜漿膜下組織漿膜
働 き
脈 管 / 神 経 
・空腸・回腸比較表
関連語句
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・「空腸・回腸の長さは、生体と死体とでは差異が激しく、生体では2~3m、死体では6~7mに達する」(日本人体解剖学)

 理由:死体での長さが生体より長くなる理由は、主に筋緊張の喪失と重力・張力の変化によるもの(ChatGPT)

・「腹腔内を迂曲走行する自然の状態では臍部、下腹部および左腸骨窩に空腸がみられ、大骨盤、下腹部および右腸骨窩に回腸が見られる。 」(日本人体解剖学)

  

  

【他の臓器との関係】

空腸は腹腔内で比較的自由に蛇行しており、腸間膜によって後腹壁に固定されながらも可動性を有する。そのため、空腸が直接接する臓器は個人差や腸管の充満状態によっても変動するが、一般的には以下のものが挙げられる。

空腸と接しやすい臓器

1. 回腸

  空腸と連続しており、境界は明確ではない。

2. 横行結腸およびその腸間膜横行結腸間膜):

  空腸の上方に位置するため、特に近位空腸は横行結腸やその腸間膜に接することがある。

 

腹腔・骨盤腔

(縦断面)

腹腔の動脈
 

 

3. 上行結腸

  空腸の右寄りのループが接する場合がありますが、一般的には回腸のほうがより密接。

4. 下行結腸

  左側腹部にあるため、空腸の左寄りのループが接することがあります。

5.(特に幽門部大弯

  空腸起始部は胃の下方(幽門後部)に近いため、間接的に接する場合があります。

6. 膵臓膵頭部・膵鉤部近傍)

 十二指腸を介して近接。

7. 大網および小網

 空腸の上方や前方を覆うことが多い。

8. 腹壁・後腹膜構造(腎臓、尿管など)

 直接というより、腸間膜を介して近接。

まとめると、空腸は回腸以外にも横行結腸・上下結腸・胃・大網などと接することがありますが、これらは固定されているわけではなく、腸の蠕動や充満状態によって接触関係が変わります。

 

以下は空腸壁の構造を簡単に表した表になる。

【粘 膜】

■粘膜上皮■

  

粘膜上皮は以下の5種類の細胞よりなる。

名 称
割合(%)
備 考
1
腸上皮細胞
80~90
 細胞表面に微絨毛を持ち栄養吸収の主役となる。
2
杯細胞
5~15
 粘液を分泌、下部ほどその数は増していく。
3
腸内分泌細胞
1~2
 消化管ホルモン(セロトニン、ガストリン他)を分泌
4
パネート細胞
1~5
 陰窩の底部に存在、抗菌物質の分泌
5
幹細胞
数 %
 分化して常に上皮の新しい細胞を供給

・割合は「ChatGPT」調べで、資料によって多少の違いが見られる。

 
絨毛を構成する細胞
陰窩底
 

 

■粘膜固有層■

以下が粘膜固有層を構成する要素となる。

名 称
備 考
1
細胞成分
 線維芽細胞、マクロファージ、樹状細胞、形質細胞、内皮細胞(血管・リンパ管を形成)
2
細胞外成分
 コラーゲン線維(主にⅠ・Ⅱ型)、弾性線維、基質(プロテオグリカン、ヒアルロン酸など)
3
血管・リンパ管
 中心乳び管、毛細血管網
4
免疫関連構造
 リンパ球や パイエル板のリンパ濾胞(GALT) に接続、小腸の免疫防御に関与

 

■粘膜筋板■

 

・厚さや発達の度合いは器官によってことなるが、食道から直腸まで粘膜筋板は一続きとなる。

 

【粘膜下組織】

・神経は神経叢(粘膜下神経叢=マイスナー神経叢)を形成する。

以下構成要素を簡単にまとめてみた。

名 称
備 考
1
血 管
 粘膜層に酸素と栄養を供給し、吸収された栄養を門脈系に送っている。特に固有の名称は付されていない。
2
リンパ管
 乳び管(小腸絨毛の中心にあるリンパ管)へと続き、脂質吸収に関与している。
3
神経叢
 マイスナー神経叢が存在し、腸の分泌や局所血流、粘膜の運動を調節
4
線維成分
5
免疫組織
 孤立リンパ小節、パイエル板(回腸ほど発達せず)

 

 
食道のマイスナー神経叢  
 

 

【筋 層】

■腸管毎の筋層の特徴■

部 位

特 徴
1

食 道

 上部1/3は骨格筋、下部2/3は平滑筋。

 内輪・外縦の二層構造は下部平滑筋にみられる。

2

 3層構造(外縦・中斜・内輪筋)

3

小腸(空/回腸)

 標準の二層構造。内輪層がやや厚く、蠕動運動が活発。

4

大 腸

 二層構造だが、外縦筋が「Taenia coli」として3本に集約される。

5

直腸・肛門

 下部直腸~肛門括約筋は骨格筋が混在。

 

【漿膜下組織】

名 称
備 考
1
疎性結合組織
 コラーゲン線維や弾性線維を含む疎性の結合組織で、漿膜とその下の筋層をゆるく結びつけている。
2
血 管
 小腸の漿膜や筋層に血液を供給するための小動脈・小静脈で、特に固有の名称は付されていないように思われる。
3
リンパ管
 小腸のリンパ流の一部として機能し、特に脂質吸収後のリンパの流れに関与
4
脂肪組織
 空腸より回腸に多い傾向有、個体差があり、加齢や栄養状態によっても増減
5
神経叢
 漿膜下神経叢:腸管の自律神経系の一部で、筋層や血管の調節に関わる。

 

【漿 膜】

  

   

以下主な働きを記す。

■栄養素の吸収(メインの機能) ■

 1. 炭水化物 → 単糖(ブドウ糖、ガラクトース、果糖)として吸収

 2. タンパク質 → アミノ酸やジペプチドとして吸収

  • 脂肪 → 脂肪酸・モノグリセリドとして吸収(乳化→ミセル形成→中心乳び管へ)

  • ビタミン・ミネラル(水溶性ビタミン、脂溶性ビタミン、鉄、カルシウムなど)も主にここで吸収

■水と電解質の吸収■

 空腸では食物と混ざった消化液の水分の多くが吸収される。

■消化の最終段階■

 十二指腸から送られてきた消化酵素に加え、空腸の刷子縁酵素が働き、糖やペプチドをさらに分解し 吸収しやすい形にする。

 

【動 脈】

上腸間膜動脈の枝である空腸動脈が空腸付近で動脈弓を形成し、そこから直動脈が空腸へ伸びていく。

 
空腸動脈
 

 

【静 脈】

空腸動脈の伴行静脈である空腸静脈

 空腸 ⇒ 直静脈 ⇒ 静脈弓 ⇒ 空腸静脈 ⇒ 上腸間膜静脈

 (静脈弓の形成は動脈ほど明瞭ではなく変異も多い。)

 
上腸間膜静脈
 

 

【リンパ管】

  • 空腸の粘膜には 乳び管(lacteals) が存在し、脂質を吸収してリンパへ送ります。
  • 腸壁内のリンパは 腸間膜リンパ節(mesenteric lymph nodes) に流入。
    • 特に 上腸間膜リンパ節(superior mesenteric lymph nodes) が重要。
  • そこから 乳び槽(cisterna chyli) を経て 胸管(thoracic duct) へ入り、最終的に静脈角へ合流。

 

 

【神 経】

 

  • 主に 腸管神経叢(enteric nervous system) が支配。
  • さらに 自律神経系からの入力を受ける:
    • 交感神経:上腸間膜神経叢(superior mesenteric plexus)由来 → 蠕動を抑制し、血管を収縮させる。
    • 副交感神経:迷走神経(vagus nerve) → 蠕動と分泌を促進。

 

 
 

 

叢形成

1. 空腸の粘膜下層・粘膜固有層における血管・リンパ管

  • 空腸の**絨毛(villi)**には、中心乳び管(central lacteal)と毛細血管網があります。

  • これらは**粘膜固有層(lamina propria)**に広がり、**毛細血管・リンパ管の叢(plexus)**を形成します。

  • 動脈・静脈・リンパ管の叢は、栄養分やリンパ液を効率よく吸収するために複雑に入り組んでいます。


2. 粘膜下層(submucosa)での叢形成

  • 粘膜下層にも血管・リンパ管が走っています。

  • 粘膜下層では、粘膜層ほど密ではないが、やや大きな血管・リンパ管が叢を形成することがあります。

    • 特に腸間膜に向かう血管(小腸動脈枝・静脈枝)が集まる部分では、網状に連結していることがあります。

  • ただし、絨毛レベルで形成される細かい叢はほぼ粘膜固有層限定です。


3. 漿膜下層・腸間膜での叢

  • 腸間膜や漿膜下層にも血管叢は存在しますが、これは腸管全体への血液供給やリンパ還流の大きな幹線のレベルです。

  • 絨毛レベルでの微細な叢とは構造も役割も異なります。


4. まとめ

血管・リンパ管の特徴 叢形成
粘膜固有層 絨毛に至る毛細血管、中心乳び管 密な叢(villus plexus)
粘膜下層 粘膜固有層からの血管・リンパ管、腸間膜に向かう枝 軽度の叢(小血管・リンパ管網)
漿膜下層・腸間膜 大血管・リンパ幹線 幹線レベルの網状構造(plexus)
  • 結論:絨毛レベルでの微細な血管・リンパ管叢は主に粘膜固有層で形成される。

  • 粘膜下層や腸間膜でも血管・リンパ管は叢状に連結するが、絨毛レベルの「吸収用叢」とは性質が異なる。


希望であれば、この血管・リンパ管の叢を 層ごとに色分けした図 で示して、絨毛から腸間膜までの流れを視覚的に整理できます。作りますか?

 

あ行
 
さ行
 
た行
 
や行
 
       
       
       
       
   
は行
   
       
       
       
   

 

 

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