脊髄神経とは
以下は「日本人体解剖学 (上巻) 」を参考に作成した図となる。
・ 運動神経 :体性運動神経で、前根を通って知覚性の神経線維と合体して脊髄神経となる。
・ 知覚神経 : 主に皮膚の感覚を司っているもので、後根に入る。
・ 交感神経 : 主に胸髄・腰髄において、脊髄側柱にある交感性神経細胞の軸索が脊髄神経に入る。
・ 副交感神経 : 仙髄において、脊髄側柱にある副交感性神経細胞の軸索が脊髄神経に入る。
脊髄神経は、脊髄から出る位置によって以下のように5つに区分される。
脊髄神経
spinal nerves |
1 |
頚神経 cervical nerves |
8 対 |
第1頸神経~第8頸神経( C 1~ C8 ) |
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2 |
胸神経 thoracic nerves |
12 対 |
第1胸神経~第12胸神経( T1 ~ T12 ) |
3 |
腰神経 lumbal nerves |
5 対 |
第1腰神経~第5腰神経( L1 ~ L5 ) |
4 |
仙骨神経 sacral nerves |
5 対 |
第1仙骨神経~第5仙骨神経( S1 ~ S5 ) |
5 |
尾骨神経 coccygeal nerve |
1 対 |
尾骨神経( CO ) |
したがって、それぞれの脊髄神経に付されている番号は
・ 頸神経 : その通過する下方の椎骨の番号
例 ) 第2頸神経 … 第1頸椎と第2頸椎との間の椎間孔を通る。
・ その他の神経 :その通過する上方の椎骨の番号
例 ) 第2胸神経 … 第2胸椎と第3胸椎との間の椎間孔を通る。
腰椎(左側面) |
頚椎・胸椎(前面) |
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■ 前 根 : ventral (/anterior) root ■
・ 運動神経 : 体性運動神経で、骨格筋に指令を伝えている。
・ 交感神経 : 主に胸髄・腰髄において、脊髄側柱にある交感性神経細胞の軸索が前根を通る。
・ 副交感神経 : 仙髄において、脊髄側柱にある副交感性神経細胞の軸索が前根を通る。
■ 後 根 : dorsal (/posterior) root ■
・ 知覚神経 : 主に皮膚などからの情報を送っている知覚神経は脊髄神経節が中継地点となって脊髄に入っていく。
・ 後根には脊髄神経節( /後根神経節 )が付属していて、その内部には視覚神経の細胞体が見られる。ただ、他の神経節とは異なり、ここではシナプス結合は見られない。 詳しくは「脊髄神経節」の解説を参照のこと。
脊髄と交感神経幹
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椎骨を含む脊髄
横断面
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脊髄・横断面 |
前根・後根模型図
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・ 前枝および後枝の中には交感神経、副交感神経からの神経線維が混在するものもある。
■ 前 枝 : ventral ramus ■
分 布 : 体幹の外側部と腹側部ならびに体肢の皮膚
※「 日本人体解剖学 (上巻) 」では、陰部神経叢を仙骨神経叢に含めて解説している。
胸神経・模型図 |
頚神経叢・模型図 |
皮神経の分布(前面) |
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■ 後 枝 :■
分布:体幹の背面の固有背筋 ( 頭部、頸部を含める) 、背部の皮膚
「 ウィキペディア 」には以下のような解説が見られる。
「髄節から出た神経がほぼそれぞれの体節に分布するが、頸部および仙骨部では隣接する髄節からの枝と交通している[1]。交通していない神経でも、それぞれの皮膚分布は、上下の神経のそれと重なりがある。」
「 ウィキペディア 」には以下のような解説が見られる。
「 L1-L3およびS1-S3の外側枝は、小さな皮枝を出して臀部の上部から大転子にかけての領域に分布している。この神経はそれぞれ上殿皮神経、下殿皮神経と呼ばれる。 」
【 例 外 】 ※「 ウィキペディア 」を参考に作成
・頚神経の外側枝は運動神経のみ。
第1頚神経:後頭部に分布。後頭下神経と呼ばれ 大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋、外側頭直筋、頭半棘筋に分布。
第2頚神経:大後頭神経と呼ばれ、項部から頭頂までの頭皮に分布する。
胸神経・模型図 |
脊髄・交感神経幹
模型図 |
脊髄神経起始部
模型図 |
皮神経の分布(後面)
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【 関連語句 】
■ 馬 尾 :cauda equina ■
脊髄神経は、脊髄の上部においては、前根および後根は硬膜腔内をほぼ水平に外側方に走っているが、脊髄の下部になるに従って次第に斜め下方に向かい、胸部の最下部、仙骨部、尾骨部ではほぼ真下にその線維束は走る形になっている。これら真下に走っている線維束を馬尾といい、脊髄の終糸をほおき状に囲っている。
■ 交通枝 : communicating branch ■
右のイラストは「日本人体解剖学 (上巻) 」の P622に掲載されている「脊髄と交感神経との模型図」を参考に作成したものとなる。このイラストによると灰白交通枝よりも白交通枝の方が内側方(より脊髄に近い)に位置しているように見える。
インターネットで画像検索をしてみると、同じように白交通枝の方を内側方にしているイラストを掲載しているサイトも見受けられるが、その反対のパターンの方が数的に圧倒的に多い。
⇒ 白交通枝を灰白交通枝よりも内側方に描いているイラストを掲載しているサイト-Ⅰ
⇒ 白交通枝を灰白交通枝よりも内側方に描いているイラストを掲載しているサイト-Ⅱ
⇒ 白交通枝を灰白交通枝よりも内側方に描いているイラストを掲載しているサイト-Ⅲ
⇒ 圧倒的に多い逆のパターンのイラスト-Ⅰ
⇒ 圧倒的に多い逆のパターンのイラスト-Ⅱ
⇒ 圧倒的に多い逆のパターンのイラスト-Ⅲ
⇒ 圧倒的に多い逆のパターンのイラスト-Ⅳ
■ 白交通枝 : white ramus communicans ■
白交通枝は脊髄神経と幹神経節(または椎前神経節)を結ぶ交通枝の1つで、以下のような特徴を有する。
・ 有髄神経細胞がほとんどを占めるため白色を呈する。
・ ここを通る神経細胞は交感神経の節前線維となる。
・ ここを通る神経細胞の起始核は 中間質外側核 ( intermediolateral nucleus ) で、頚髄下部から腰髄上部において発達している。
・幹神経節でニューロンを新たにしたものは灰白交通枝を通って脊髄神経に加わっていく。
【 シナプス結合 】
白交通枝を通る交感神経のシナプス結合は以下の3通りとなる。
つまり、起始部と同じ高さの幹神経節までが節前線維 ( preganglionic fibers ) となる。
つまり、一度起始部と同じ高さの幹神経節に入るが、そこではシナプス結合せずに、上下に走って違う高さにある幹神経節でニューロンを新たにする。
当然のことながら幹神経節でシナプス結合する場合に比べると、節前線維としてはかなり長くなる。
1)「同じ」高さの幹神経節
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2)「違う」高さの幹神経節
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3)幹神経節を通過して |
■ 灰白交通枝 : gray ramus ( communicans ) ■
・ 灰白色を呈する。以下は「 日本人体解剖学 (上巻) 」の解説文の一部になる。
「 灰白交通枝は大部分無髄あるいはごく繊細な髄鞘に包まれるため、肉眼的に灰白色に見える。」
・灰白交通枝と白交通枝の位置関係
「 日本人体解剖学 (上巻) 」に掲載されているイラストでは、灰白交通枝は白交通枝の外側に位置しているように描かれ
ている。インターネットで画像検索をかけてみると、同じように描かれているイラストを掲載しているサイトがいくつか見
られるが、圧倒的に灰白交通枝を白交通枝の内側に描いているイラストを掲載しているサイトの方が多い。
脊髄の側角にある中間質外側核を起始とする交感神経は、脊髄を出て前根を通り白交通枝経由で同じ高さにある幹神経節(/椎傍神経節)に入る。そしてその幹神経節で多極神経細胞とシナプス結合するものもあれば、交感神経幹を上下に移動して別の高さにある幹神経節でシナプス結合する場合もある。
■ 硬膜枝 : meningeal branch ■ ⇒ より詳細な解説ページへ
下記は「日本人体解剖学」(南山堂)からの引用文となる。
「脊髄神経は脊柱管を出た直後に交通枝によって、近位の(交感神経)幹神経節あるいは交感神経幹と連絡し、また反回性の硬膜枝を出して脊柱管内の硬膜に分布する。」
以下、ウィキペデァからの引用文
「前根と後根が合流した先で、脊髄神経は細い硬膜枝と交通枝を出したのち、体の前面に向かう前枝と後面に向かう後枝に分かれる(前根・後根と混同しないよう注意されよ)。硬膜枝は硬膜の知覚を伝え、交通枝は交感神経幹の神経節に入る。」
脊髄神経起始部
模型図
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脊髄(神経)・交感神経幹・模型図
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