・ 概 要
・ 起 始
・ 節前線維/節後線維と神経伝達物質
・ 構 成
( ・交感神経幹:幹神経節、節間枝、横枝、 ・自律神経叢 )
・ 交感神経幹からの主な枝とその分布
( 頭部・頚部、 胸部、 腹部、 骨盤部 )
・ その他
( 交通枝、 交感神経の基本的構造 )
交感神経系は 「日本人体解剖学 (上巻) 」では以下のように解説している。 「自律神経系には、交感神経と副交感神経があるが、交感神経と副交感神経は、互いに拮抗的に働き、生命維持にとって重要な機能を反射的に調節している。交感神経は、戦争-戦闘的な活動、危険からの回避のときに働く神経で、副交感神経は平和-休息、安静時に働く神経である。」 以下は神経系全体を表した図になる。
以下は「ウィキペディア」の解説文となる。 「末梢の交感神経線維は胸髄・腰髄の側角細胞に始まる。ここから出た神経線維は交感神経幹神経節(椎傍神経節)またはさらに末梢の椎前神経節(腹腔神経節・上腸間膜神経節など)に至り、ここで次のニューロンに交代して末梢の効果器に分布している。」
交感神経線維も、副交感神経線維同様、節前線維と節後線維に区別することができる。 以下は「ウィキペディア」の解説文となる。 「このように交感神経は2つの神経線維の連絡から成り立っており、神経節までの線維を節前線維といい、交代した神経節から先の線維を節後線維という。なお、1つの節前線維に複数の節後線維が接続していることも多い。」 「 日本人体解剖学 (上巻) 」には以下のような解説文が見られる。 「 節前線維と節後線維とのシナプス、あるいは節後線維と効果器(筋・腺など)との接合部における興奮の伝達は、化学的物質(神経伝達物質)によって行われる。神経終末から放出される化学物質の種類により、末梢神経系の自律神経はコリン作動性(cholinergic fiber:アセチルコリンを放出するニューロン)とノルアドレナリン作動(adrenergic fiber:ノルアドレナリンを放出するニューロン)の2つに大別される。」
交感神経系は
① (交感神経)幹神経節 : sympathetic trunk ganglion ・ 交感神経幹のいたるところにみられる。 ・ 数は、脊椎の両側にに20数対で、ほぼ脊髄神経節の数に一致する。 場所によっては少なくなる。特に頸部では、神経節同士が癒合して2~3個となっている。 「 日本人体解剖学 (上巻) 」には「幹神経節の数は全体として20~30個となる」という説明が見られるが、実際にの数に比べると少し少ないような気がする。 「Wikipedia」では以下のように解説している。 There are usually 22-23 pairs of these ganglia 3 in the cervical region 11 in the thoracic region (note the presence of the stellate cervicothoracic ganglia) 4 in the lumbar region 4-5 in the sacral region Throughout human evolution, the first thoracic and inferior cervical ganglia merged - and this resulting ganglion is called the stellate ganglion (so called because of its radiating pattern similar in appearance to a star). ・「 They contain approximately 20,000–30,000 nerve cell bodies 」( Wikipedia ) ※「 交感神経節 」との違い 「 交感神経節 」という名称は、交感神経系に属するすべての神経節を表す言葉だと思われる。
② 節間枝 : interganglionic branch 以下は「船戸和弥のホームページ」の解説文となる。 「交感神経幹の節間枝は交感神経幹の隣接する神経節間を結ぶ節前・節後線維で、上位下位の神経節の連絡をしている。」 「横走する結合枝,すなわち横枝Rami transversi,これは両側の交感神経幹をたがいに結びつけるもので,変化に富んでいる.横枝は交感神経の腰部Lumbalteilと仙骨部Sakralteilでだけかなり規則正しい存在を示している.」( Rauber-Kopsch解剖学 )
自律神経叢とは
以下は「日本人体解剖学 (上巻) 」の解説文となる。 「幹神経節からの節後線維のうち、頭頚部の器官(唾液腺、眼球、頭頚部の血管など)、胸部の器官(心臓、気管支、肺、食道など)に分布する線維は血管の周囲に沿いながら末梢部で互いに結合して各所に自律神経叢をつくる。また、幹神経節を通過し腹部内臓と骨盤内臓に分布する線維は途中で自律(神経)叢神経節でニューロンをかえ、節後線維となり血管の周囲に沿いながらそれぞれの臓器に分布するが、これらの線維はまた、末梢部で互いに結合して各所に自律神経叢をつくる。 「 船戸和弥のホームページ 」では以下のように解説している。 「自律神経叢は血管と内臓を支配する神経叢で、その構成神経線維は、交感・副交感神経と知覚神経線維。)」
以下は「日本人体解剖学 (上巻) 」の「交感神経系」の「交感神経幹からの主な枝とその分布」を基本に作成したものになる。「日本人体解剖学 (上巻) 」では、交感神経幹からの主な枝とその分布を解説するのに、交感神経幹を部位ごとに以下の4部に分けている。
「Rauber-Kopsch解剖学」でも、交感神経系を「頭部、頚部、胸部、腹部、骨盤部」に区別をしているが、「頭部」の解説は見られない。一方、「 日本人体解剖学 (上巻) 」では「頭部と頚部」ということで解説はあるものの、その区別に関する説明は見られない。想像するに、「 日本人体解剖学 (上巻) 」には終神経の解説が見られるので、終神経が頭部、そして上神経節から下部を頚部と考えるのが妥当だと思われる。 「Rauber-Kopsch解剖学」の「頚部」の解説では以下のような説明が見られる。 「頚部では各側に通常3つの[交感]幹神経節Grenzstrangganglienがみられる.それは各1個の上,中,下の頚神経節であって,これらはもともと8つの分節性の神経節が2次的に融合して3つになったのである.」
・ 交感神経幹の中で最も整然とした配列を示す。 【 神経節 】 位 置 : 肋骨頭の前側 数 : 10 ~ 12 対 融 合 : 胸神経節は、往々にして上下の2個が1つに融合することがある。 頚胸神経節( 星状神経節 ): 大きな第1胸神経節と第2胸神経節が融合したもの。 「 日本人体解剖学 (上巻) 」には以下のような解説が見られる。 「 交感神経幹の胸部の下端は、横隔膜の腰椎部で外側脚と中間脚との間にある裂隙を通り腹腔内に入る。胸部の交感神経幹は、多数の交通枝によって肋骨神経と連絡する。」 【 枝 】 胸部の交感神経幹から出る枝は以下となる。
・腹部の交感神経幹は、胸部のものよりも内側(腰椎の椎体の前面を)下行している。 【 神経節 】 ・大腰筋起始部の内側に4~5個の神経節が見られ、通常、2本の交通枝によって脊髄神経と交通している。 「交感神経幹の腰部には4~5個の腰神経節Ganglia lumbaliaがあり,これらは紡錘形あるいは卵円形をしている.最後の腰神経節がふつう最も大きい.」(Rauber-Kopsch解剖学)
以下は腹部の交感神経幹からの枝と、腹部に見られる神経叢を示した簡単な図となる。
交感神経幹は、仙骨の前面で前仙骨孔の内側を下行し、直腸の後外側に至る。左右の交感神経幹は下行しながら互いに接近して、第1尾椎の前面で互いに結合して終わるか、不対の不対神経節を形成して終了する。 【 神経節 】 ・4~5個の仙骨神経節が付属し、各神経節からは仙骨内臓神経が出て近くの臓器に分布している。 不対神経節:左右の交感神経幹が第1尾骨の前面で合体して形成する神経節で、尾骨神経節とも。 交感神経系の骨盤部の神経叢だが、「 日本人体解剖学 (上巻) 」には以下のような解説文が見られる。 「 骨盤部に見られる( 自律神経叢には以下のものがある。)自律神経叢には交感神経だけでなく、仙骨部からの副交感神経も含む。」
直接、交感神経幹の構成には関わっていないが関連するものとして ・交通枝 : 交感神経幹と同じ高さの脊髄神経を1本から2本で結んでいるもので、以下の2種類がある。
「Rauber-Kopsch解剖学」には以下のような解説が見られる。 「交感神経の組立てには本質的な成分,すなわち神経細胞と神経線維のほかに,なお結合組織と血管とが関与している. 1. 完全に出来上がった交感神経vdllig ausgebildeter Sympathicusのなかでは神経細胞はその個体のすべての場所において必ずしも同一の構造をもっているわけでない.たしかに圧倒的に多いのが多極細胞であるが(図574~578),しかし双極細胞もあるし,そのうえ単極細胞および無極細胞apolare Zellenも観察されている.突起の数によって交感性のニューロンが決定されるのではなくて,たずその由来によるのである.これらの突起のうちの1つはいうまでもなく神経突起(軸索突起)である.しかしStöhr jr. (1929)によるとほとんどすべての交感性のニューロンにおいては神経突起と樹状突起とを区別することは不可能である(しかし図576, 577を比較せよ).核は多くは1個だけ存在し,それは小さい胞状の典型的な神経細胞核であり,1個あるいはそれ以上の円い核小体をもっている. 多数の核(2~14個)を有つ神経細胞は精嚢腺神経叢の若干の神経節にみられる(20%).この多核性はすでに胎生後期において存在する.年令がすすむとともに多核性の細胞の数はいっそう少くなってくる.Watzka, M., Anat. Anz. 66. Bd.,1928. 神経原線維,ニッスル小体(虎斑物質),内網装置Binnengerüstはもちろん交感性のニューロンの細胞体においても証明される. クローム親性細胞とその性質を示す小体もまた交感神経において証明されている. 2. 神経線維Nervenfasernは有髄性あるいは無髄性である.有髄性の線維の太さはすこぶるまちまちで,無髄性のものの太さは狭い範囲内で変動する.最も細い無髄線維は二叉に分れており,多くはその表面が全く平滑である. 神経節のなかで交感性のニューロンが相互のあいだで結合するぐあいは,すでに中枢神経系のニューロンについて説明したのと同じようである(289, 290頁):すなわち1つのニューロンの突起は終末分枝となって他のニューロンの細胞体やその突起の周りに終わっている(図576, 577).Stöhr jr. はこれと反対に交感神経系の合胞体性の構成という見解をもっている.」 |