ホルモン( 英:hormone )

 

概 要
歴史的考察
分 類
 分泌腺による分類
 化学構造による分類ペプチド・タンパク質ホルモンステロイドホルモンアミノ酸誘導体ホルモン
 作用方式による分類内分泌傍分泌自己分泌神経内分泌
消化管ホルモン
神経内分泌ホルモン
サイトカイン/成長因子

 

 

【概 要】

ホルモンは生理活性物質の一つとなる。

「ぜ古典的ホルモンでさえも数に幅があるのか?」と「ChatGPT」に尋ねてみた。

「ホルモンによっては前駆体やサブユニットあり、それを含めて1つとカウントするのか、それとも別々と捉えるのかで異なる。」

 

【歴史的考察】

■1902年■

イギリス人のウィリアム・ベイリス、アーネスト・スターリングが「セレクチン」を発見

「十二指腸で靴られ血流にのって膵臓に作用することを実験(神経を切断しても作用する)して確認した。」

■1905年■

スターリングによって「ホルモン(ギリシャ語で「刺激する」)」という言葉が誕生

■~1950年代■

いわゆる「古典的ホルモン(分泌腺が分泌し、血流に乗って離れた器官に作用する)」が次々に発見され内分泌学が成立する。

■1960~70年代■

研究が進むにつれて「古典的ホルモン」に対して矛盾が見え始める。

・血流に乗らなくても作用する物質がある。・同じ物質が神経でも使用されている。・局所でも作用している。など。

■1980~90年代■

「ホルモン」に対する概念の爆発的拡張

消化管ホルモン、神経ペプチド、成長因子、サイトカインなど「ホルモンと他の生理活性物質の境界」が曖昧になってくる。

■2000年~■

「折衷案」的な考え方が広まりつつある?

・古典的定義は教育的には有用 ・研究的には作用様重視

現在はホルモンの分泌様式として以下の4つで固定されつつある?

1. 内分泌(古典的概念) 2. 傍分泌 3. 自己分泌 4. 神経分泌

【分 類】

基本的な分類軸は以下の3通りとなる。

  

■分泌腺による分類■

古典的ホルモンは分泌腺によって以下のように分類ができる。

内分泌腺

名   称

 

備   考 (働き等)

視床下部

脳下垂体前葉・中葉ホルモンの放出因子または抑制因子

 

 脳下垂体前葉または中葉ホルモンの分泌の促進及び抑制

脳下垂体

前葉

成長ホルモン

ペプ

 成長促進(タンパク質の合成促進、骨、筋肉、内臓の成長促進)

甲状腺刺激ホルモン

 

 チロキシン(甲状腺ホルモン)の分泌促進

副腎皮質刺激ホルモン

 

 糖質コルチコイドの分泌促進

性殖腺刺激ホルモン

ろ胞刺激ホルモン

 

 ろ胞ホルモンの分泌促進。卵巣、精巣の成熟促進

黄体形成ホルモン

 

 排卵の誘発、黄体の形成、男性ホルモンの分泌促進

プロラクチン (黄体刺激ホルモン)

 

 黄体ホルモンの分泌促進。乳腺の発達促進、泌乳。

中葉

インテルメジン (色素胞刺激ホルモン)

 

 メラニンの合成

後葉

バソプレシン (抗利尿ホルモン)

ペプ

 腎細管での水分の再吸収促進。毛細血管、小動脈の収縮。

オキシトシン (子宮収縮ホルモン)

ペプ

 子宮筋の収縮。柔汁の排出促進。

甲状腺

チロキシン (甲状腺ホルモン)

 

 代謝の促進

副甲状腺

パラトルモン (副甲状腺ホルモン)

 

 骨に作用してカルシウムイオンの血液中への放出の促進

副腎

髄質

アドレナリン

 

 神経節や脳神経系における神経伝達物質でもある。

皮質

糖質コルチコイド

 

 ステロイドホルモンの一種。肝臓でタンパク質の糖化を促進。

鉱質コルチコイド

 

 ステロイドホルモンの一種。ナトリウムイオンやカリウムイオンの濃度調節

膵臓

β細胞

インシュリン

ペプ

 糖質(炭水化物)の代謝の調節。血糖値を低下させる。

α細胞

グルカゴン

ペプ

 血糖値の上昇作用(肝臓、骨格筋グリコーゲンを糖化)

性殖腺

精巣

テストステロン
(男性ホルモン)

 

 95%が精巣、5%が副腎で合成。女性も男性の5~10%は分泌。

卵巣

エストロゲン
(女性ホルモン、ろ胞ホルモン)

 

 「女性らしさ」を形成する。男性も分泌(更年期の女性程度)。

プロゲステロン
(女性ホルモン、黄体ホルモン)

 

 妊娠の準備及び維持

 

■化学構造による分類■

古典的ホルモンは化学構造によって以下のように分類ができる。

〈ペプチド・タンパク質ホルモン〉

主な特徴

・アミノ酸配列からなる

・水溶性⇒細胞膜を通過できない。

・細胞膜受容体に作用

・作用発言が速いが、持続は比較的短い。

 

主なホルモン一覧

ペプチド・タンパク質ホルモン一覧(部位別)
1
視床下部
 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ソマトスタチン、 ドーパミン
2
下垂体前葉
 成長ホルモン、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン
3
下垂体後葉
 バソプレシン、 オキシトシン
4
膵臓
 インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵ポリペプチド
5
消化管
 ガストリン、セクレチン、コレシストキニン、GIP GLP-1 モチリン、ソマトスタチン
6
心臓
 心房性ナトリウム利尿ペプチド、 脳性ナトリウム利尿ペプチド
7
腎臓
 レニン、エリスロポエチン
8
脂肪組織

 レプチン、アディポネクチン

9
胎盤
 ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤ラクトゲン
10
その他
 FGF23(骨)、エンドセリン(血管内皮)、 サイトカイン(免疫細胞)

 

〈ステロイドホルモン〉

主な特徴

・コレステロール由来

・脂溶性⇒細胞膜を通過できる。

・細胞内受容体に作用する。

 

副腎皮質から分泌
1
 コルチゾール
2
 アルドステロン
3
 デヒドロエピアンドロステロン
性 腺
1
 テストステロン(精巣)
2
 エストロゲン(卵巣)
3
 プロゲステロン(卵巣・胎盤)
胎 盤
1
 エストロゲン
2
 プロゲステロン

 

〈アミノ酸誘導体ホルモン〉

主な特徴

・単体のアミノ酸(主にチロシン、トリプトファン)に由来

・水溶性と脂溶性の両方が存在⇒受容体の存在部位が異なる。

・作用発現までに時間差がある。

 カテコールアミン)速い(秒~分)、甲状腺ホルモン(時間~日)

 

カテコールアミン(チロシン)
1
 アドレナリン
2
 ノルアドレナリン
3
 ドーパミン
甲状腺ホルモン(チロシン)
1
 チロキシン
2
 トリヨードチロニン
インドールアミン(トリプトファン)
1
 メラトニン

 

■作用方式による分類■

  

〈内分泌〉

血流に乗って離れた標的細胞(/組織)に届く古典的ホルモンのケース

代表的例

 
ホルモン名
主な分泌部位
作用
1
インスリン
 膵臓(ランゲルハンス島β細胞)
 血糖低下、糖取り込み促進
2
グルカゴン
 膵臓(α細胞)
 血糖上昇
3
コルチゾール
 副腎皮質
 ストレス応答、代謝調節
4
甲状腺ホルモン
 甲状腺
 代謝促進、成長発達
5
アルドステロン
 副腎皮質
 Na保持、血圧調節

 

〈傍分泌〉

・血流には乗らず、細胞外液中を局所的(隣接細胞~同一組織内)に拡散

 拡散の距離は約10㎛~数百㎛程度

・同じ種類の細胞が標的細胞となることも日常的にごく普通に起こっている。 

 ⇒隣接する細胞同士が、刺激(促進)と抑制を同時に使い分けながら、常に相互調節し合っている。

・水溶性ホルモンが圧倒的多数⇒膜受容体型ホルモン

 例外:一酸化窒素(NO)やプロスタグランジンなどは脂溶性ホルモンとなる。

代表例

 
ホルモン名
主な分泌部位
作用
1
上皮成長因子
上皮細胞
細胞増殖、創傷治癒
2
血管内皮成長因子
低酸素組織
血管新生
3
一酸化窒素
血管内皮
血管拡張
4
プロスタグランジン
多くの組織
炎症、血流調節
5
消化管ソマトスタチン
消化管内分泌細胞
消化管ホルモン抑制

 

〈自己分泌〉

・自分が分泌したホルモンを自分の受容体で受け取ること。

 つまり、「分泌細胞=標的細胞」

・自己分泌専用の細胞は存在せず、分泌物が他の細胞の受容体に作用すれば「傍分泌」

・そのほとんどは水溶性となる。

   

代表例

 
ホルモン名
主な分泌部位
作 用
1
インターロイキン2
活性化T細胞
T細胞自身の増殖促進
2
インスリン様成長因子
多くの細胞
自己の成長・生存促進
3
トランスフォーミング成長因子β
免疫細胞など
自己増殖抑制・分化調節
4
腫瘍壊死因子α
マクロファージ
炎症反応の自己増幅
5
上皮成長因子
腫瘍細胞など
自己増殖促進

 

〈神経内分泌〉

・細胞質で産生され、軸索を移動して軸索終末で分泌される。

・分泌されたホルモンは近くの血管に進入し、血流に乗って全身に運ばれる。

・ほとんどは水溶性となる。

代表例

 
ホルモン名
主な分泌部位
作用
1
バソプレシン(ADH) 視床下部 → 下垂体後葉 水再吸収、血圧維持
2
オキシトシン 視床下部 → 下垂体後葉 子宮収縮、射乳
3
副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH) 視床下部 ACTH分泌促進
4
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH) 視床下部 TSH・PRL分泌促進
5
性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH) 視床下部 LH・FSH分泌促進

 

【消化管ホルモン】

・消化管の粘膜上皮に存在する内分泌細胞の割合は「0.5%~2%」と小さいがその役割は大きい。

  胃・十二指腸 ⇒ 比較的多い 小腸遠位部・大腸 ⇒ やや少ない

・消化管ホルモンはその殆どがペプチド・タンパク質ホルモンで例外としては…。

 セロトニン(5-HT) : トリプトファン由来のアミン

主なホルモン一覧

 

 
ホルモン名
主な分泌部位
主な働き
1
ガストリン
 胃前庭部(G細胞)
 胃酸分泌促進、胃粘膜増殖、胃運動促進
2
セクレチン
 十二指腸(S細胞)
 膵・胆管からの重炭酸分泌促進、胃酸分泌抑制
3
コレシストキニン
 十二指腸・空腸(I細胞)
 膵消化酵素分泌促進、胆嚢収縮、胃排出抑制、満腹感誘導
4
GIP
 十二指腸・空腸(K細胞)
 インスリン分泌促進(インクレチン作用)、胃酸分泌抑制
5
GLP-1
 回腸・大腸(L細胞)
 インスリン分泌促進、グルカゴン抑制、胃排出抑制、食欲抑制
6
GLP-2
 回腸・大腸(L細胞)
 腸粘膜増殖促進、腸管バリア機能維持
7
モチリン
 十二指腸・空腸
 空腹期の消化管運動促進(移動性収縮運動:MMC)
8
ソマトスタチン
 胃・腸管(D細胞)、膵δ細胞
 胃酸・消化管ホルモン・膵ホルモン分泌の抑制(全体的抑制因子)
9
ペプチドYY
 回腸・大腸(L細胞)
 胃排出抑制、食欲抑制、腸管運動抑制
10
ニューロテンシン
 回腸・結腸
 胃酸分泌抑制、腸管血流増加、脂肪吸収調節
11
血管作動性腸管ペプチド
 腸管神経叢(神経内分泌細胞)
 腸液分泌促進、平滑筋弛緩、血管拡張、胃酸分泌抑制

 

【神経内分泌ホルモン】

主なホルモン一覧

 

 
名 称
分泌ニューロンの部位
主な作用
 
視床下部(下垂体後葉系:直接分泌型)
1

バソプレシン

(抗利尿ホルモン)

 視床下部(視索上核・室傍核)
 腎での水再吸収促進、血圧調節
2
オキシトシン
 視床下部(視索上核・室傍核)
 子宮収縮、射乳反射
視床下部 (下垂体前葉調節系:門脈系)
1
副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン
 視床下部(室傍核)
 副腎皮質刺激ホルモン分泌促進
2
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン
 視床下部(室傍核)
 甲状腺刺激ホルモン(+プロラクチンL)分泌促進
3
性腺刺激ホルモン放出ホルモン
 視床下部(視索前野(preoptic area)・弓状核)
 黄体形成ホルモン・卵胞刺激ホルモン分泌促進
4
成長ホルモン放出ホルモン
 視床下部(弓状核)
 GH 分泌促進
5
ソマトスタチン
 視床下部(室周囲核)
 成長ホルモン・甲状腺刺激ホルモン分泌抑制
6
ドーパミン(PIH)
 視床下部(弓状核(漏斗核
))
 PRL 分泌抑制
松果体
1
メラトニン
 松果体
概日リズム調節、睡眠
視床下部以外の中枢神経系由来(代表例)
1
βエンドルフィン
 視床下部・下垂体
鎮痛、ストレス応答
2
α-MSH
 視床下部・下垂体
色素沈着、摂食調節

 

【サイトカイン/成長因子】

サイトカイン:主に免疫細胞が分泌し、免疫反応を調節・コントロールしている。例:インターロイキン、インターフェロンなど

成長因子:細胞に増殖・修復・維持を伝える物質 例:上皮成長因子、神経成長因子など

 

主なホルモン一覧]

 

 
名 称
主な分泌部位
分泌様式
主な働き
サイトカイン
1
インターロイキン6
 免疫細胞、脂肪細胞、骨格筋
自己・傍・内分泌
炎症、肝での急性期反応、代謝調節
2
腫瘍壊死因子α
 マクロファージ、脂肪細胞
傍・内分泌
炎症促進、発熱、インスリン抵抗性
3
インターフェロンγ
 T細胞、NK細胞
傍・内分泌
マクロファージ活性化、免疫促進
4
トランスフォーミング成長因子β
 多くの細胞
自己・傍(状況により内分泌)
増殖抑制、免疫抑制、組織修復
成長因子
1
インスリン様成長因子1
 肝臓(主)
内分泌
全身の成長促進、骨・筋の発達
2
血管内皮成長因子
 低酸素組織、腫瘍細胞
傍分泌(例外的に内分泌的)
血管新生
3
線維芽細胞成長因子21
 肝臓、脂肪組織
内分泌
糖・脂質代謝調節、エネルギー恒常性
4
レプチン
 脂肪細胞
内分泌
食欲抑制、エネルギー調節