以下は「日本人体解剖学 (上巻) 」と「船戸和弥のホームページ」の「終神経」の解説文からの抜粋文となる。
・J.N.Aでは視神経の代わりに第2脳神経として記載されているが、P.N.Aでは自律神経として扱われている。また、TAでは第0脳神経として扱われている。
J.N.A :Jena Nomina Anatomica P.N.A : Pari Nomina Anatomica T.A.: Terminologia Anatomica
⇒ 解剖学用語の歴史
・ヒトでは退化的であるが、一般に水生動物でよく発達している。
・経過中に自律神経細胞を有し、嗅球の近くで終神経節を形成する。
以下は「日本人体解剖学 (上巻) 」の解説文となる。
「鼻中隔軟骨部の特殊粘膜から出て、嗅神経とともに篩骨篩板を通って、頭蓋腔中に入り嗅三角付近に終わる。ヒトでは退化的であるが、一般に水生動物ではよく発達している。 終神経は、J.N.Aでは視神経の代わりに第2脳神経として記載されているが、P.N.Aでは自律神経として扱われている。終神経は、その経過中に自律性神経細胞をもち、嗅球の近くでこれらの細胞は密集して終神経節を形成する。終神経節の作用については、なお不明で、鼻粘膜と自律性反射作用との関係について議論されている。」
以下は「船戸和弥のホームページ」の解説文となる。
「この神経は、1878年にFritschがサメで発見し、ヌタウナギを除く全ての脊椎動物に存在している。TAでは第0脳神経として終神経が記載されている。終神経は、嗅索とは独立に、その内側を通る神経として軟骨魚類で初めて認められた。肉眼解剖学的には、嗅上皮からはじまり、終脳の終板の近傍で脳に入っている。終板の近傍で脳に入ることから終神経という名前が付けられた。神経の走行中に散在性の自律性神経細胞を有し、しかもこれが密集して嗅球の近くで終神経節が存在している。
終神経は、少なくとも発生のある段階までは、比較解剖学的にみると、終神経は水棲動物でよく発達しており、イルカや鯨のような嗅神経を失った動物にも、よく発達している。 板鰓類(サメやエイなど)のように終神経が神経束として独立して神経束として終脳と嗅上皮とを結んでいる例をのぞき、多くの脊椎動物では、終神経の嗅覚神経路または副嗅覚神経路に混在する形で混在している。そして、その神経突起の一部を嗅上皮に送っている。別の軸索は脳に向かい、嗅覚の一次中枢である嗅球を通り、さらに嗅索を介して、前脳および間脳の性行動や生殖を制御する部位へ達する。真骨魚類では終神経の軸索の一部は嗅覚系路、終脳を経て視神経に入り、最終的には網膜に達し、ドーパミン性のinterplexiform cellsにシナプスを形成する(Demski, L.S., Northcutt, G. : Science, 220 : 435-437, 1983., Springer, A.D. : J. Comp. Neurol., 214 : 404-415, 1983. Zucker, C.L., Dowling, J.E. : Nature, 330 : 166-168, 1987.)。すなわち、魚類での終神経は鼻と眼を結んでいる。
脳神経に番号が付けられた頃には、この神経はまだ知られていなかった。また終神経はJNAでは視神経の変わりに第2脳神経として上げられていたが、NAでは自律神経として扱われている。それはこの神経が嗅神経に混じて、鼻粘膜に分布する神経で、特に鋤鼻器およびその付近の粘膜と密接な関係を有すると言われている。嗅神経とともに篩骨篩板を通って前頭蓋窩に入り、通常数条の細い線維束に分かれ、直回の脳軟膜のなかを通り、嗅三角の内側部またはその近くで脳実質に入るが、一部の線維は中隔や視索前野にこれを伝えるとともに、視床下部のあたりまで追求されゴナドトロピン放出ホルモンを出して、下垂体系に作用しているものと考えられる。 終神経節を構成する神経細胞は、鼻板に由来する。組織化学的に、終神経節の細胞は、性腺刺激ホルモン放出ホルモンや、軟体動物から分離されたペプチドであるFMRF-amidなどを含有している。形態学的には、単極細胞が多く、これに少数の双極細胞や偽単極細胞が混在している。 」