2011年 7月16日、一応「リンパ系」のページをアップするが、「とりあえずトップページだけアップした」という感じになってしまった。将来、充実を図るためのベースとしていきたいと考えているので、その点はご了解いただければ幸いである。
私たちの身体を構成する細胞の回りには組織液(または間質液)と呼ばれる液体が存在している。この組織液は血液の血漿成分が毛細血管からしみ出たもので、その多くはもとの毛細血管に戻っていくが、10%ほどの組織液はリンパ管に流れ込みリンパ(lymph)となってリンパ管の中を流れる。
このリンパの流れる経路を「リンパ系」と呼び、以下のような構成要素が挙げられる。
⇒ その他のYouTubeへの投稿動画(ドイツ語、CGで解説)
⇒ その他のYouTubeへの投稿動画(英語、癌のリンパ節の転移に関して)
リンパ管の中を流れる液体をリンパ(ときにリンパ液と呼ばれることもある)と言い、以下のような特長がある。
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薄い黄色の透明な液体
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一般的には薄い黄色の透明な液体でアルカリ性を呈する。
乳糜(にゅうび):消化管からのリンパのことで、脂肪球を含んでいるため乳白色を呈している。そのリンパ管は乳糜管と呼ばれている。
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成分は血漿に準じる
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リンパは、もともとは組織液の一部が毛細リンパ管の壁を通過して中に流れ込んだもの。そして、その組織液は毛細血管から血漿がしみ出たものになる。よって、リンパの成分は血漿に準じ、その約90%は水分ということになる。
ただし、消化管からのリンパは脂肪球を多く含んでいたり、毛細リンパ管ではリンパ球はほとんど見られないのに対して、流れが進むにつれてその数は増していくなど場所によっては若干の違いを呈する。
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リンパを通すリンパ管であるが、以下の3種類がある。
リンパ節はリンパ管のところどころに存在し、以下のような特長がある。
⇒ その他のYouTube(英語、アニメーションで解説)
⇒ その他のYouTube(英語:腋窩リンパ節の摘出手術)
静脈と同じように、リンパ管にも皮下付近にある浅リンパ管と、より深層に存在している深リンパ管に区別することができる。また、それぞれは互いに連絡し合っている。
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浅リンパ管 |
一般的には、浅筋膜の上を皮下静脈の走行に従って走っている。 |
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深リンパ管 |
一般的には、浅リンパ管よりも、より深層にある血管に伴って走っている。 |
全身のリンパ管は、それぞれに存在しているリンパ節を通過した後に、左右の大きな幹に集まり静脈に注いでいる。右側の幹が右リンパ本幹(右胸管とも)、左側の幹が胸管である。
【 胸 管 (thoracic duct) 】
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形状など |
長さ:資料によってその数値に差がある。
・「日本人体解剖学 (下巻)」(南山堂)では…約40㎝
・「船戸和弥のホームページ」の「解剖学テキスト」の「脈管学」では…38~45㎝
また 「船戸和弥のホームページ」の「解剖学テキスト」の「脈管学」の「リンパ管系」から以下のような説明文も見受けられる。
「日本人では35.9cmの長さしかない(Adachi).多くの例では第3腰椎の前ではじまっているが,第1腰椎ないし第12胸椎のところでやっと始まっている場合もある.日本人では下方で始まるものが大多数である.
」
太さ:「日本人体解剖学 (下巻)」(南山堂)では…「成人の胸管はほぼ色鉛筆の芯の太さ」とあり3㎜くらい?
・以下は「胸管造影に関する研究」からの引用文
「胸管終末部直径は1~7㎜と種々な太さを示しているが、直径2㎜のものが最も多く31例中12例(39%)であり、7㎜を示した1例は…」
弁:「船戸和弥のホームページ」の「解剖学テキスト」の「脈管学」の「リンパ管系」から以下のような説明文が見受けられる。
「胸管にはその全長にわたって弁が存在し,そのところで管がふくらみを呈している.Adachiによるとたいてい10~19個(最少4個, 最大25個)の弁が存在する.上部と下部にいっそう多くて,中央部にはわずかしかない. 」 |
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起 始 |
第1~第2腰椎のやや右側前面で、左右の腰リンパ本幹および腸リンパ本幹が合する部分
※3つのリンパ本幹の合流の仕方も一様ではなくいろいろな合流の仕方がある。また、胸管がその走行の途中で2つに分かれてから再び1本に合流することもある。
⇒ いろいろな起始部のイラストを掲載しているサイト
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走 行 |
腹大動脈の右後壁に沿って上に走り、横隔膜の大動脈裂孔を通過して胸腔に出る。その後、食道の後面を走ってその左側に出て、およそ第7頚椎の高さでカーブを描いて前方に曲がり左静脈角(左鎖骨下静脈と左内頚静脈が合流する部分)に入る。静脈角に入る前に左頚リンパ本幹と左鎖骨下リンパ本幹が流れ込んでいる。
⇒ いろいろな左静脈角への入り方のイラストを掲載しているサイト
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受けるリンパ本幹 |
・左頚リンパ本幹 ・左鎖骨下リンパ本幹 ・腰リンパ本管 ・腸リンパ本幹 |
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その他 |
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関連イラスト |
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【右リンパ本幹】right lymphatic duct
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概 要 |
右上半身のリンパを集める1~3㎝の非常に短 いリンパ本幹で、数㎜の径があり、右静脈角に注ぐところには弁がある。 |
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受けるリンパ本幹 |
・右頚リンパ本幹 ・右鎖骨下リンパ本幹 ・気管支縦隔リンパ本幹 |
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関連イラスト |
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・リンパ小節 lymph nodule
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概 要 |
Bリンパ球が球状に密集したもので、Bリンパ球を生産している。
⇒ 組織学的写真を掲載しているサイトⅠ
⇒ 組織学的写真を掲載しているサイトⅡ
⇒ 組織学的写真を掲載しているサイトⅢ
⇒ 組織学的写真を掲載しているサイトⅣ |
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種 類 |
・ニ次小節:中心に胚中心をもつもの
・一次小節:胚中心を持たないもの |
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その他 |
・孤立リンパ小節:散在するリンパ小節のこと
・集合リンパ小節:群在するリンパ小節のことで、特に回腸や虫垂などに見られる。
・パイエル板 (Peyer's patch):回腸に見られるリンパ小節
・消化管付属リンパ組織(gut-associated lymphoid tissue [GALT])
消化管の粘膜にあるリンパ小節の総称
・粘膜付属リンパ組織(mucous-associated lymphoid tissue[MALT])
呼吸器や泌尿生殖器の粘膜にあるリンパ小節の総称 |
・リンパ叢 lymphatic plexus
リンパ管はところどころで密集して分岐吻合をし合うリンパ叢を形成する。
⇒ 主なリンパ叢一覧
「日本人体解剖学 (下巻)」(南山堂)の「リンパ系」の項を基にして作成。
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